死者を悼み悲しむ人の基本的な権利に関する宣言
(前文) 全て人間は、他者との関係の中に生きているのですから、ある人またはある生物の死に際し、その喪失により心に痛みを覚え、悲しみの感情が生じ得ることは自然なことです。この感情は、人種や属する社会、立場といった違いを超え、あらゆる人に生来根源的に具えられたものですから、この事実に思いを致し、悲しみの内にある全ての人を尊重することは、広く人類社会の平和に資することです。そこで、死者を悼み悲しんでいる人が自由にまた十分に自己の悲しみと向き合うことができるよう、その人々には以下の基本的な権利が存在することをここに宣言するものです。 しかしながら、複雑な人間社会においては、一死者を悼み悲しむ人々の間においても、時として感情や理念の対立が起こり得ます。その場合には、まずはその人々自身が、互いにこれらの権利を有することを思い起こし、互いを尊重し合い、平和的に問題を解決するよう努めなければなりません。 (自由に悲しむ権利) 第1条 あなたは、あなたが心に想う死者を、自由に悼み悲しむ権利があります。 第2条 あなたは、あなたに合った悲しみの速さ、強さ、かたちで悲しむ権利があります。 第3条 あなたは、あなたが悲しむために必要な時間、場所、他者からの配慮を得る権利があります。 第4条 あなたは、その悲しみを自由に表現し、あるいは表現しない権利があります。 (尊厳を守られる権利) 第5条 あなたと死者は、それぞれ一人の人間としての尊厳を守られる権利があります。 第6条 あなたと死者は、周囲の好奇心や悪意ある言動から守られる権利があります。 第7条 あなたは、あなたと死者、またその葬祭のプライバシーを守られる権利があります。 (宗教や思想を選択する権利) 第8条 あなたは、死者を追悼するに際し、そのよすがとして宗教や思想を自由に選択し、あるいは選択しない権利があります。 第9条 あなたは、死者の葬祭を行うに際し、その様式として宗教を自由に選択し、あるいは選択しない権利があります。また必要であれば、その共同体や指導者をも選択する権利があります。 (葬祭の方法を選択する権利) 第10条 あなたは、死者の葬祭を行うに際し、その葬祭の方法を自由に選択する権利があります。 第11条 あなたは、葬祭の方法を選択するにあたり、葬祭や宗教などについての正しく十分な情報を得る権利があります。 第12条 あなたは、葬祭や宗教などについてあなたが持つ情報では十分に判断がつかない場合、あなたが自由に選択した第三者の意見をいつでも何度でも求める権利があります。 (葬祭サービスを受ける権利) 第13条 あなたは、死者の葬祭を行うに際し、あなたの必要とする葬祭サービスを適正かつ公平に受ける権利があります。 第14条 あなたは、死者の葬祭を行うに際し、あなたの必要とする葬祭サービスを受けるために、そのサービスを受ける事業者等を自由に選択し、あるいは選択しない権利があります。また、それをいつでも何度でも変更する権利があります。 第15条 あなたは、それらの事業者等から葬祭サービスについての説明を十分に理解できるように受け、あなたの受ける葬祭サービスを自由に選択し、あるいは必要としないサービスを受けることを拒否する権利があります。 (実務を代理人に付託する権利) 第16条 あなたは、この宣言に述べる権利を行使するにあたり、自らが自由な意思と行為によってその権利を行使することはもとより、あなたの意思を最大限に尊重する第三者を代理人に選任し、その実務を付託する権利があります。 2013年8月 高見晴彦及び有志協力者
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