word : 遺体保全処置 [いたいほぜんしょち]
subword : ドライアイス[dryice]/エンバーミング[embalming]/清拭[せいしき]/湯灌[ゆかん]/エンジェルケア[angelcare]
【遺体保全処置】とは、遺体の腐敗を遅延し、また遺体の外見的変化を抑制するために行われる種々の処置の総称。
【ドライアイス】とは、ご存じのように炭酸ガスの塊。温度が低く、昇華するため水分が出ないので、生鮮食品や洋菓子などの保冷に用いられることが多い。葬儀では遺体の保全に用いられる。
普通10〜15kgが1回分でおおよそ24時間を目安に交換するが、気温や遺体の状況などにより使用量は異なる。なお冬季には不要と思っている人も多いが、やはり使用するべきである。
【エンバーミング】とは、遺体に施す防腐処置のひとつ。海外で創られた技術で、日本語では「遺体衛生保全」と訳される。専門の施設で遺体の一部を切開して血液を抜き、代わりに防腐剤を注入する。長期間遺体を保全でき、事故などで損壊した遺体もある程度整復できることが利点。
発祥地である北米などでは土葬が多く、感染症予防などの観点からポピュラーな遺体処置だが、近年の火葬率上昇に伴い施行率が減少しているようだ。日本では火葬までの日数が概して短く、単純な遺体保全はほとんどがドライアイスで事足りることなどから、需要があまりなく実施割合は1%程度にとどまっている。
近年は大手企業などを中心にだんだんと販売されるようになってきたが、高価(施設への移送のための料金も含めると販売価格で20万円を超えることが多いようだ。米国では3〜4万円程度)であり、前記のように必要性が薄いため葬儀社の押し売りとの批判も根強い。さらに法的に確たる整備が為されていないためトラブルも懸念される。ただし遺体を海外に移送する場合などには重要な技術である。
なお「embalm」は「(死体に)香油を塗る」という意味であり、本来はミイラを作ること。古代からの遺体保全の知恵がうかがえる。
【清拭】とは、身体を拭き清めることで、主に医療・介護現場での用語。葬儀に際しては遺体を拭き清めることを言う。
【湯灌】とは、遺体を湯で洗い清める風習。広くは遺体を拭き清める「清拭」も含むが、葬儀業界内では区別されている。
旧来は自宅の風呂を使用して湯灌をしていたようだが、現在では在宅入浴介護の技術を応用して、専用のバスタブを室内に持ち込み行う。地域によっては湯灌の風習が多く残っているところもあるが、費用も手間もかかり、部屋もそれなりの広さがいるため、特に都市部では病院での清拭ですませることが多い。
現実的な利点としては、あふれた腹水(体液)などを洗い流せることや、ドライアイスで凍結した遺体をほぐし、服の着せ替えが可能になることなどが挙げられる。ただし逆に、遺体の温度が上がるために腐敗を促進させてしまうという危険性も指摘されている。
また現在のように専門業者が発生する以前は親族が行うものとされており、遺体に直接触れることで身内の死を確認するという、通過儀礼のひとつとして重要であったとも言える。
【エンジェルケア】とは、一部の看護士の用語で遺体処置のこと。清拭、着せ替え、綿詰め、顔剃り、化粧などを包括的に指して言う。
日本での研究が始められたのは近年のことで、葬儀業界との連携が弱いなどいまだ発展や普及の途上にある。
▽ 注釈・参考資料等
< 注釈 >
< 参考資料 >
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