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質問
死亡者数の増加が予測される今後、キリスト教葬儀はどうなっていくのでしょうか?
回答
共同体としての教会の役割が、今後ますます重要になると思います

 まずはキリスト教専門葬儀社が生まれた背景についてご説明いたします。以前の葬祭業界では「キリスト教葬儀は儲からない」という考え方が一般的だったと思われます。仏式葬儀のように段飾りの祭壇を飾ることが不要なキリスト教葬儀は、葬儀社側にとって「売上単価が低い」「利益率が悪い」お葬式でした。一方で、日本ではマイノリティな宗教であるキリスト教の葬儀に、多くの葬儀社はそれほど力を入れてきませんでした。これが「キリスト教葬儀に精通した葬儀社が少ない」という問題の背景にあると思われます。こうした背景を踏まえて、葬祭業界における「ニッチ産業」であるところのキリスト教専門葬儀社が生まれたといえます。その需要は非常に小さなものですが、キリスト教葬儀に特化することで、件数の限られたお葬式を確実に獲得するという葬儀屋さんが生まれたということです。しかし先にも述べましたように、もとより絶対的な需要(件数)が少ない業態の葬儀社であるため、同一エリアに多くのキリスト教葬儀社が存在すれば「共倒れ」ということになりかねません。よってキリスト教専門葬儀社は少ないのです。
 ならば「大手葬儀社もキリスト教葬儀に本腰をいれてくれれば」という考え方もできるのですが、ここにもひとつ条件があるかと思われます。それは「葬儀屋さん自身がクリスチャンである」というものです。おそらく皆様もお分かりかと思います。私たちクリスチャンには、クリスチャンとしての感性、信仰を証しする考え方や言動というものがあると思います。ことお葬式の場面において、この感覚は非常に重要であるといえます。葬儀屋さんがキリスト教葬儀を実務的に学んでスキルを上げたとしても、信仰生活に根付いた感性は学んで会得できるものとは異なるということです。私自身がキリスト教専門葬儀社の経営者であるため、これを申し上げるのは少々憚られるのですが「同じ神を信じ、イエス・キリストを救い主をして賛美する感性をもった葬儀屋さん」であることにこそ、キリスト教専門葬儀社の価値があるのではないかということです。

 さて次に、キリスト教葬儀の今後を考えてみたいと思います。絶対的な需要(件数)の少ないキリスト教葬儀ではありますが、今後の死亡者数の増加を考えたとき、それぞれのキリスト教専門葬儀社はその対応に頭を悩ませます。もちろん私もそのひとりです。もとより売上単価の低いキリスト教葬儀ですが、昨今いわれる「お葬式の小規模化・簡素化」という流れは私どもの経営にも影響します。一方で死亡件数が増加するとなると「現場でお手伝いする社員(担当者)の増員」という課題もあります。しかし葬儀単価が下落傾向にある現状で、その人件費はどこから捻出するのか。分母の小さい商圏を相手にする業態ですから、私たちに潤沢な内部留保(≒運転資金)があるはずもありません。簡単に「薄利多売」にシフトできるものでもないというのが正直なところなのです。

 では一体どうすればいいのでしょうか。私は、同じ兄弟姉妹を送るお葬式において「共同体としての各教会の役割」に解決の糸口があるのではないかと考えております。葬儀社と共同体としての教会がタッグを組んで、お葬式が発生した際にはお互いが連携を取り合って滞りのないお葬式をすすめていくということです。葬儀社と教会がお互いの状況を理解しあって、臨機応変に対応していくという方針が肝要なのではないかと考えるものであります。「葬儀屋さんの企業努力が足りない」といわれるかもしれません。しかし現状のキリスト教葬儀を取り巻く環境を考えると、共同体としての教会自らがキリスト教葬儀の本質を継承していくのだという意識を持つ他ないのではないでしょうか。私は、お葬式こそキリスト教の伝道(宣教)の、最大のチャンスの場であると確信しております。すでに教会単位で、キリスト教葬儀について考える勉強会を開いているところもあります。このような取り組みが、今後のキリスト教葬儀の継承に繋がるものと考えるものであります。
[ 回答者:岡田守生 ] 2017/03/18
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