自分の葬儀


▽ 自分が死んだら?

 この仕事をしていてよく聞かれる質問に「あなたが死んだとき、どんな葬儀(葬式)をしたいですか?」というものがあります。
 いろいろな葬儀を経験しているので、何か変わった意見があるだろうと期待されるのですが、実のところ私は自分の葬儀については全然こだわりがありません。
 しかし「別に葬式もいりませんけど、まあ、残った人の好きなようにしてもらいます」と答えると、大抵呆れられるか叱られます。(T^T)
 そんなこと言われても…と思うのはさておき、まあせっかくですから(葬式をするならという前提で)勝手な希望を考えてみたいと思います。

▽ どこで死にたいか

 それを考えるならまず、どこで死にたいかということから考えなければならないでしょう。
 癌ならばホスピス(緩和ケア)病院を希望しますし、他の病気や老衰なら延命治療(栄養点滴含む)はせずに自宅で死にたいですね。
※ 自宅の場合は主治医が必要。でないと警察の検案が必要になるから大変。

▽ どんな規模でするか

 葬式に来てもらう人は、ごく近しい人だけでいいです。
 というか、友人や親族には死んでから葬式に来てくれるより、生きている間に面会に来てもらいたいと思います。私の住所録には、「死亡時に連絡が必要か」という項目があるので、その人たちに伝われば十分です。
※ 両親と兄弟、古い親友数人だけです。
 他の人には、医師の余命診断を聞いた時に、「あと2〜3ヶ月の命らしいですので、よかったら面会に来てやって」と連絡してください。私が話せない状況なら、面会に来た人に「これが葬式代わりです」と言ってください。

▽ どこで葬式をするか

 式場は自宅でもいいけれど、遺族が存外大変なので、教会の方がいいでしょう。その時所属している教会に依頼したら貸してくれると思います。
 他には、公営会館ならいいけれど、葬儀社の会館はお金が勿体ないからパス。そこに支払うぐらいなら、その分教会に献金してください。

▽ 牧師への連絡

 その時所属している教会の牧師に、危篤状態(あるいはいつ死んでもおかしくない状況)になったら一旦連絡して、空いた時間に(生きている間に)枕頭の祈りに来てもらってください。
※ それから比較的長く保っても、改めて来てもらう必要はありません。
 その後、「夜中に亡くなっても、朝に連絡しますから」と伝えておけば牧師も夜はゆっくり休めるでしょう。
 ちなみに、12月も中頃以降に危なくなったら、近親一同でとにかく年を越えるように祈ってください。具体的には、1月の初めの主日の、次の火曜日以降に死ぬように…

▽ 式の構成

 式の構成は、納棺式、当日式、火葬前式のみでいいです。前夜式は無しで、その時間はビューイング(顔を見ての自由な告別の時)に当ててください。
 納棺式は牧師の都合にもよるけれど、早い時間(教会に着いたらすぐでも)にしておけばドライアイスの保ちがいいし、屍臭が拡散しにくいです。

▽ 当日式の内容

 当日式の内容は、CS礼拝と同じでいいです。
 献金もしたらいいと思いますが、逆に弔辞も弔電も遺族挨拶も献花(後述)もいりません。
 人数も少ないので式次第も無しで、聖書と讃美歌を各々持ってください。
 オルガニストがいなければ讃美歌はヒムプレイヤーでもCDでもいいですし、アカペラでもいいです。ちなみに、愛唱讃美歌はこどもさんびか120番と103番です。
※ 讃美歌21では533番と60番。

▽ 葬儀社の選定

 葬儀社は死んでからではなく、数ヶ月前から選んでおいた方が楽ですよ。数社から見積もりを取ってもいいです。
 心当たりがなければ、所属教会の牧師の使いやすい葬儀社を紹介してもらってください。キリスト教専門葬儀社は特定地域にしかないので、その時の現住地によっては専門葬儀社でなくてもいいです。

▽ 葬儀社に用意してもらうもの

 葬儀社に用意してもらうものは、最低限でいいです。
 具体的には、棺1本・棺の台1組・ドライアイス適量・移送車両適宜・出棺車両1台のみ。
 遺影写真はいりません(近親しかいないのだから、顔を見れば済むことです)。献花・骨箱も不要(後述)です。もちろん式場の花飾りもいりません。

▽ 葬儀社にしてもらうこと

 死亡診断書の提出と火葬場の手続きは、諸般の事情から葬儀社に任せることが通例です。やってできないことはないですが、無理をせず任せたらいいと思いますよ。
※ ただし、料金を請求されるようなら拒否して自分で行ってもいいです。
 それと、火葬場によっては葬儀社の付添がないと受け入れてくれない所もあるので、当地の慣習に従ってください。
 教会のセッティング・現状復帰と掃除も基本的には葬儀社に依頼してください。できるだけ教会員さんの手を煩わせないように。
 あとは…まあ、ドライアイスも「効きやすい配置」というのがあるので、任せたらいいと思いますよ。

▽ 棺

 棺は燃やすだけですから、安いものでいいです。ペラペラの物でも底が抜けないように痩せておきますから、栄養点滴は打たないように。
 柩に花(=気持ち)以外の副葬品は入れないでください。死体に着せる服も、着せるのが楽な浴衣とかでいいです。
 ヨブ記の精神などと立派なことは言いませんが、勿体ないので使える物はまた使うか、欲しい人にあげればいいと思います。

▽ 献花

 式の中で献花はいりません。
 したい人は、ビューイングの時に各自で持ってきて柩に入れてください。
 別段、花でないといけないわけでもありません。酒をかけたければ、かけてもいいです(私は飲みませんが)。煙草を持たせたければ、それでもいいです(私は吸いませんが)。

▽ 遺骨と墓

 火葬場の事情が許す限りは、遺骨を持ち帰る必要はありません。できるだけ焼き尽くし、共同埋葬してもらってください。
 従って、墓もいりません。死の国の入口は、思い出す人の心の中にあります。
※ 「随筆:死の国の入口」参照

▽ お花料(香典)

 葬儀には(こんな葬儀でも)お金がかかるので、お花料をくれる人がいたら、もらったらいいですよ。
 葬儀に使って、余ったお金でお返しをしたらいいです。
※ 現金で返してもいいです。
 余らなかったら、「助かりました」とお礼だけ言っておけばいいと思います。

▽ 自分の葬儀はできない

 …冒頭に「勝手な希望を」と言いましたが、ふと我に返って読み返すと、ホントに勝手なことを言っているなぁと思います。
 しかも「遺書」みたいになってるし。いや、ウケ(=笑い)を狙っているのではなく、かなり真面目に書いたんですけど…
 これならやっぱり、「残った人の好きなように…」と言っている方がいいですね。

 さらに実行面での課題もあります。これらのことを理解して実行してくれる、連れ合いが必要だという…(T^T)


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